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黒島のお話2

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岩肌の白い部分は今まで海の中だった

僕に煙草を恵んでくれたのは、

​炊き出し活動を行ったボランティア拠点の建物から、空き地を隔てたお隣さんだった。

 

一緒に海を眺めながら、一服をする。

この黒島集落は、地震による地盤の隆起によって、海が最大240m遠ざかり、陸地面積が30%増えた。

知識としては知っていた。

3月下旬に訪れた時、地元の人は「海岸線が遠のいたから、この冬は潮の飛沫が家にかからなくてラクだったわ」と笑っていた。

一服仲間のマスガタさんが言う。

「地球は生きてるから、一年に1mm、海底は隆起する」

「今回の地震では、10分、いや10分すらもしない間に、4000年分のことが、起こったんだよ」

​今回の地震で、最大4mの隆起が発生した海岸線を眺めながら、言う。

「波の音は、うちらにとって、子守歌だ。同じ集落でも、少し山の方の皆は、耳について眠れないって言うけどね」

「窓を開けると、

 ざざぁ~~~ん

 ざざぁ~~~~~ん

 聴こえるわけ」​

「ずっとそれ聴いて育ってるから、子守歌、よね」

「でも、地震の後は、少しその音が、こわかったかな、、、、

 ・・す~ぐに元に戻って、子守歌よ。笑」

「波の音は、ずいぶん遠くなったけどね」

にこにこ笑いながら、穏やかな、穏やかな語り口。

僕は、黒島の実際の波の音よりも、

マスガタさんの口から聴いた、

ざざぁ~~~~ん

の波の音の方が、ずっと優しく耳に残って、僕を癒してくれている。

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